「考えるのは、人。つくるのは、AI。決めるのは、人。」岩手県私学教育研修会で話したこと
LECTURE NOTES / 2026.8.6
8月6日、サンセール盛岡で開かれた第48回岩手県私学教育研修会の「情報教育・ICT活用分科会」で、講師をさせていただきました。演題は「映像戦略と生成AIで考える、これからの私学教育」。県内の私学の先生方と、午後3時間の枠でした。
どんな話をしたのか、当日の流れに沿って残しておきます。
目次
きっかけは、現場で聞いてきた3つの声
考えるのは、人。「翻訳」の話
つくるのは、AI。——魔法の一文ではなく、設計図を渡す
決めるのは、人。4つの編集部による、AI公開編集会
持ち帰り
締めに
少しだけ、自分の話
01
きっかけは、現場で聞いてきた3つの声
中身は正直かなり悩みました。参加予定の先生に聞くと、パワポ資料はもうAIで作ってるとのこと。入門講座では意味がない。
それで、僕が学校の仕事で何度も聞いてきた3つの声から始めることにしました。
経営の方から、いつも。「入学者を、増やしたい。」
現場の先生方から、いつも。「ただでさえ、忙しい。」
最近いちばんよく聞く声。「AIで作ってる。でも、みんな同じに見えて、つまらない。」
人も時間も増えない。それでも相手に届く仕事をどうつくるか。この3つを束ねて、当日の問いにしました。
「選ばれる学校になるには、何を変えるべきか。」
学校そのものは3時間では変えられません。でも、伝え方と、AIとの仕事の進め方は変えられる。今日はその2つに絞ります、と最初に宣言しました。
02
考えるのは、人。「翻訳」の話
まず数字から。岩手県の中学校卒業者は、2025年の9,715人が2035年には6,839人になる予測で、10年で約3割減ります(出典:岩手県教育委員会「第3期県立高等学校再編計画」)。しかも中学生と保護者では見ている項目が違って、中学生は部活動、保護者は進路と通学(出典:宮城県教育委員会のアンケート、2024年)。条件だけで学校選びは決まらないんですね。
考えるとは、翻訳すること。学校の言葉を「入学したら、自分に何が起きるか」の予感に翻訳する。決めるのは3つだけです。
1誰に届けるか
2どんな変化を予感してほしいか
3その予感を、どの場面で見せるか
事例として、盛岡白百合学園さんと千厩高校さんのPVを上映しました。白百合さんの依頼は「共学になることを広く伝えたい」。それを「何かが始まるかもしれない」に翻訳して、見せる場面は「男女が仲良く」ではなく、一枚のプレパラートにしました。千厩さんは校長先生の言葉「ちょうどいい学校」を「何か見つかるかもしれない」に翻訳。PVのために作った曲が学校で歌われて、テーマソングとして育ち始めているのが嬉しいところです。
岩手広告賞 2冠→人は、学校の条件だけを選んでいるのではなくて、そこで始まる自分も選んでいる。僕はそう考えています。
03
つくるのは、AI。
魔法の一文ではなく、設計図を渡す
ただ、ここまで考えたものを全部人の手でつくると、「ただでさえ忙しい」に戻ってしまう。だから第2幕はAIです。
AIに必要なのは魔法の一文じゃなくて、仕事の設計図。僕は4つの段階で考えています。
プロンプト=何を頼むか
コンテキスト=相手・目的・背景・材料を渡す
ハーネス=守る条件と、良し悪しの基準を決める
ループ=出力を見て、次に何と返すか
実演は、架空の「岩手ひらく学園高等学校」(実在しません)のオープンスクールポスターで3回転。1回目は学校名だけ渡す。出てきたのは、デザインは素晴らしい、でも情報は全部うそ、というポスター。2回目は学校の実際の情報と届けたい相手を渡し、3回目は守る条件と良し悪しの基準を足す。回すたびに、その学校のものになっていきます。
ここで同じ設計図を、Claude・Gemini・ChatGPTの3つに渡してみたんです。これが大ウケでした。
Claudeは、めちゃくちゃできる10年目選手。でも、美的センスがない。
ChatGPTは、最強のクリエイター。でも、工夫が足りない。
Geminiは、なんでもイラストにしちゃう画家。
同じ指示でもこんなに違う。「AIで作るとみんな同じになる」の逆で、渡すものとAI次第で、ちゃんと違いが出るんですね。
04
決めるのは、人。
4つの編集部による、AI公開編集会
休憩後は、カードの記号(●■▲★)ごとに4つの卓へ。
AIがつくったものは答えじゃなくて、編集前の暫定案。ここからは先生方の目を借りて編集します。
●
届く編集部:読み手の目。本当に、その相手が動くか
■
らしさ編集部:並べる目。ほかの学校にも言える内容ではないか
▲
使える編集部:現場の目。学校で本当に実行できるか
★
守る編集部:世間の目。危険・誇張・誤情報がないか
進め方は、1人で5分、全員の読み上げ5分、卓で改善指示を一文にする5分。発表するのは完成案ではなく、AIへ次に返す一文です。
各卓の一文を、その場で3つのAIに返しました。ここでもまた10年目選手と最強クリエイターと画家がそれぞれの答えを出してきて、会場は大盛り上がり。皆さんの指示がどこに反映されて何が変わったのかを一緒に見て、「このまま採用できる」か「もう一周必要」かを決めてもらいました。
第1幕の「誰に・どんな未来・どの場面」がコンテキスト、4つの編集部がハーネス、改善指示を返してもう一度見るのがループ。皆さんが考えると、AIが変わる。そして、今やったことを1人でできるのがAIの強みです。
05
持ち帰り
学校に戻って一周回せるように、「AIと仕事を、一周回すカード」を持ち帰ってもらいました。カードには3つの約束も。
個人情報(氏名・成績・住所・顔写真)は、入力しない
出力はうのみにせず、必ず自分の目で事実確認する
各校のルールと、文部科学省のガイドラインにしたがう
2026年8月時点の僕の道具箱も共有しました。文章・企画はChatGPTとClaude、画像はChatGPT、資料や長文の構成はClaude、動画(静止画を動かす)はKling。
06
締めに
最初の問いに戻りました。選ばれる学校になるために変えるのは、誰に何を伝えるか、AIとどうつくるか、何を採用し何を直すか。
つくるのは、AIに任せていい。
考えることと、決めることは、手放さないでください。
07
少しだけ、自分の話
映像戦略は会社を設立してからずっと取り組んできたテーマで、なんならそれを始めたくて会社を起こしました。学校に行けない時期があった僕が、先生方の前でこの話をさせていただけるなんて、人生は不思議です。
企業や学校で多分80回くらい講演や講義をしてきましたが、話すのは本当に下手で、今回も緊張しました。それでも後半のワークが予想以上に盛り上がって、先生方の関心の高さを感じました。
機会をくださった岩手県私学協会と先生方、会場を整えてくださった盛岡白百合学園の先生方、ありがとうございました。冬には高校での講義も控えています。それまでに、もう少し貯めておきます。
ご縁に感謝。
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