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創って終わりたくない、盛岡白百合学園のTVCMで大切にしたこと




みなさんにとって「CM」とはなんでしょうか。なんとなく見る、飛ばす、どうでもいい、うざい、でもたまに見ちゃう…捉え方は人それぞれだと思います。今まで数えきれないほどCMを創ってきました。おそらくTVCMだけで1000本は超えてるかもしれません。岩手が中心で、一時期は岩手でOAされていた大半を制作していた記憶があります。


今はPVやYouTubeなどの仕事が増え、TVCMは少なくなりました。これは僕が会社を立ち上げた理由とも深く関係しています。ただ何かを創って終わるのは、ある時から少し虚しさを感じ始めたんです。創った後にこそ重要だと感じ、完成後もクライアントさんに寄り添いながら共に歩んでいける仕事がしたい。その想いを実現するために立ち上げた会社です。


そのため、「TVCMを創って終わり」というお仕事は徐々に減りました。一方で、クライアントさんと直接やり取りし、寄り添って創るようになってから、自然とPVやYoutube・HP制作やDesignなど、多種多様になりました。



とはいえ、TVCMを創って終わりという仕事自体に意味がないとは思っていません。可能であれば、創った後もクライアントさんに寄り添いたい、という気持ちが強いだけです。だからTVCM単体の制作もお引き受けします。その際は徹底的に考え抜いて、当たり前のことですが、できるだけ役立つようしっかりと寄り添います。



小さい頃からテレビっ子で、たくさんのCMを見てきて、TVCMで本気で何かを変えれるんじゃないかという思いが募りこの業界に入りました。CMは、自分から「見たい」と思って見るものではありません。だからこそ、視聴者にポジティブに受け取ってもらうのは難しい分野だと思います。僕は、この監督はどんな意図で演出しているのか?なんのカメラで、どんなレンズを使ってるんだろう?編集ソフトは何だろう、このエフェクトはあのプラグインかな…シャドウに青入れてるな…など、無限に楽しめるフェティッシュなタイプなので、かなり稀な視聴者です。



だからこそ、普通の視聴者にいかに届けるかを考えます。CM案を考える前に、TV局の方や広告代理店の方とターゲットがよく見ている時間帯を探り、OA数をできるだけ多く配信できるかクライアントと相談し、見てもらう確率を高める。まずそういうベースがあって、その上で何を創るかが重要だと思っています。



そうして創ったのが、今回の盛岡白百合学園さんのTVCMです。



盛岡白百合学園さんは来年、共学化を控えています。今まさに、学園の内部ではその日を迎えるため、たくさんの方が動き、準備を進めています。私はその一環でホームページ制作も担当し、様々な媒体の広告展開、そしてTVCM制作へと至りました。



CM制作にあたって、とても悩みました。



まず、15秒1タイプのCMでは伝えづらい、という感覚がありました。「共学化」というテーマは、1つの物語ではうまく伝わりにくいと思ったからです。撮影日ギリギリまでは、「15秒×2タイプ」という方向で進んでいましたが、様々な事情で最終的には「15秒×1タイプ」となりました。本当は、「学園の日常」と「部活」という2つの切り口で描きたいと考えていましたが、「学園の日常」1タイプのみになりました。



ここ6年ほど、盛岡白百合学園に通わせていただき、様々な撮影をする中で学園の生活を少しずつ知ることができました。ですが、女子校に通った経験のない私が「女子校のまま」のCMを作るなら、精度の高い企画案を生み出すのは難しかったかもしれません。



色々と思考をめぐらせた結果、広告の香りが強すぎる、「奪いにいく」タイプのCMは適さないと考えました。そうではなく、「寄り添う」CMを目指しました。「奪う」ではなく「掴む」に近い表現かもしれません。



僕は未来の共学になった盛岡白百合学園の学園生活を体験してないし、多分体験できません。だけど時空が歪んでなぜかその世界に入っちゃった時、こんな学園生活なら嬉しいな、というシーンを想像して創りました。



「見たことないけど、なぜか知っている」



そんな気持ちをCMで共有して、広告として「心を掴む」事を意識しました。




僕は正直いうと野心的で、それが前面に出てしまうタイプだと思います。でもそれだとどうしても「奪う」表現になりやすい。今回はそうではなく、できるだけ「差し出す」ことを意識しました。よければご覧ください。


15秒


どうしても諦めきれずいくつものカットを撮りました。わがままに付き合ってくれた盛岡白百合学園さん、撮影クルーに感謝しています。お時間ある時に。

33秒





僕はまだまだ未熟ですので、死ぬまでコツコツ精進し、もっとクライアントさんのためになる、そして見る人に伝わる何かを残せればいいなと考えています。


将来孫に「なんかじいちゃん、映像と写真うまかったんだね」そう言われる事がささやかな夢です。



ご縁に感謝。